区分所有法 第十条(区分所有権売渡請求権)の解説

条文

敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

解説

敷地利用権をもたない区分所有者に対して、専有部分の収去を請求する権利を持っている人(敷地の権利者)は区分所有権を時価で売り渡すことを請求することができます。

民法第八十六条では第1項で「土地及びその定着物は、不動産とする。」と、第2項で「不動産以外の物は、すべて動産とする。」と規定されており、建物と土地は別々の不動産として扱われますので、建物については建物の所有権を持っていればいいことになります。

しかし、土地の上に建物が建っている以上、建物を所有するにあたっては土地に対する何らかの権利が必要です。この土地に対する権利がない場合、建物は不法占拠状態であり、土地の所有者はこの建物の収去(取り壊すこと)を求めることができます。

区分所有建物の場合は、区分所有法第二十二条により、原則として専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができません。しかし、管理規約によって分離処分を可能にしていたり、分離処分を禁止する以前に分離処分されていたりして、区分所有者が敷地利用権を有していないというケースもあります。

この場合、敷地利用権を有する人は専有部分の収去を請求する権利があるわけですが、区分所有建物の一部分だけを取り壊すわけにはいかないので、収去する権利があってもあまり意味がありません。

そこで、収去を請求する代わりに区分所有権を時価で売り渡すように請求できるようにしたのがこの規定です。

なお、売渡請求権と表記されていますが、これは形成権です。敷地利用権者の一方的な意思表示によって法律関係を形成することができます。

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