区分所有法とは

区分所有法の制定

正式には「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年4月4日法律第69号)という名称で、通常は「区分所有法」と呼ばれます。昭和37年(1962年)に制定され、昭和38年(1962年)4月1日から施行されました。

区分所有法が制定されるまで、一棟の建物を区分して所有するというような物件に対応する規定としては、民法旧208条がありました。しかし、第二次世界大戦後、高度経済成長とともに高層マンションが増加し、民法旧208条では対応できなくなったため、当初は37箇条からなる区分所有法が制定されました。

区分所有法は、1棟の建物の一部を独立した所有権の目的とすることができるようにし、その権利関係を定めるとともに、建物および敷地等の共同管理のための組織や運営方法などについて定めた法律です。1棟の建物と書きましたが、複数棟で構成される団地についての定めもあります。

主に対象となるのは分譲マンションで、各住戸部分(専有部分)が区分所有の目的となり、区分所有法に則って区分所有者(専有部分の所有者)で構成された管理組合が躯体部分(壁や床など)や廊下、階段などの共用部分を管理していくことになります。

第1章 建物の区分所有、第2章 団地、第3章 罰則の3部構成になっていて、全部で72の条文からなります。

昭和58年(1983年) の改正

分譲マンションに対応するため制定された区分所有法でしたが、膨大で煩雑な登記作業や全員合意が求められたことによる機能不全などの課題が指摘されるようになりました。

そこで、昭和58年に下記を主な内容とする大改正が行われ、条文も37箇条から70箇条に大幅に増えて内容を充実させることとなりました。

  • 規約の設定・変更や共用部分の変更を特別決議とする(それまでは全員の書面による合意が必要でした。)
  • 区分所有者の団体に関する規定、管理組合法人制度の新設
  • 共同の利益に反する行為者を区分所有関係から排除するための訴訟制度の新設
  • 専有部分と敷地利用権の分離処分禁止とこれに対応する不動産登記制度の改正
  • 特別決議による建替え決議の新設

平成14年(2002年) 区分所有法 改正

昭和58年に大改正された区分所有法でしたが、急速な都市化による分譲マンションの更なる増加と建物の目的や形態の多様化により、管理面でのトラブルが増加しました。また、阪神・淡路大震災により被災マンションの建替えの問題が浮き彫りとなりました。

そのため、平成14年に管理の適正化と建替えの円滑化に関することを中心に区分所有法が改正されました。

共用部分変更の決議要件の緩和

これまで共用部分を変更する際、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」は区分所有者と議決権のそれぞれ過半数の賛成(普通決議)で可能で、「その他の変更」については区分所有者と議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成(特別決議)で可能とされていました。

これには「著しく多額の費用を要しない」というあいまいな表現が使われていたり、計画的な大規模修繕を行うためにも特別決議が必要だったりという問題を抱えていました。

そこで、平成14年の改正によって、「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別決議)で決する。」と定められました。

この改正により「形状または効用の著しい変更を伴わないもの」は区分所有者と議決権それぞれ過半数の賛成(普通決議)で可能となりました。

管理者等の権限の拡大

従前は、共用部分等について生じた損害賠償金の請求や受領は各区分所有者が持分割合に応じて権利行使をするものとされていました。

改正により、管理者が区分所有者を代理してこれらのことがができるようになりました。また、規約や集会の決議によって、共用部分が損害を受けた場合に管理者が区分所有者を代理して訴訟等をおこなうことができます。

規約の適正化

管理規約はマンションごとに作成されますので、管理規約によっては特定の区分所有者に半永久的な専用使用権を認めていたり、法人と個人との間で管理費の負担割合に大きな差を定めたりしたものがありました。

改正により「規約は、 専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、 これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、 区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。」と定められましたので、著しく不公平な規約については無効と判断されることもあります。

管理組合法人化の要件緩和

従来は区分所有者の数が30人以上ある管理組合のみが法人格を取得することができましたが、この改正で人数による法人成立要件が撤廃されました。

区分所有者の数が2人以上の管理組合であれば、法人格の取得が認められるようになりました。

規約・議事録等および集会・決議の電子化

IT時代に対応すべく、下記のような規約や集会に関することを電子化することができるようになりました。

  • 規約や議事録を電磁的記録(フロッピーディスク等、FDは今どき見ませんが・・・)により作成・保管することができる。
  • 規約または集会の決議により、電磁的方法(電子メール等)により議決権を行使することができる。

復旧における買取指定者

これまでは、建物が大規模滅失(建物の価格の2分の1を超える部分が滅失)した場合、復旧決議に反対する区分所有者が賛成する区分所有者に、いつでも誰にでも買取請求をすることが可能でした。

そのため、買取請求が特定のものに集中したり、復旧工事の開始後に買取請求ができたりという不都合がありました。

本改正では、復旧決議の賛成者全員の合意により買取人(ディベロッパーなど)を指定することができるようになりました。また、復旧決議を行なった集会を招集した者が4ヶ月以上の期間を定めて買取請求権を行使するか否かを催告して、この期間を経過すると反対者は買取請求を行使できなくなりました。

建替え決議要件の簡略化

従来、建替え決議を行うためには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要であるのに加えて、「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったとき」(過分の費用)の要件が必要でした。

改正により、過分の費用の要件が撤廃されましたので、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成のみで建替え決議を行うことができるようになりました。

団地内建物の建替え承認決議

団地内の1棟の建物を建替えしようとする場合、従来は通常の建替え決議に加えて敷地の全共有者の同意が必要(民法の共有の規定に従う)とされていました。

改正によって、団地管理組合の集会において議決権の4分の3以上の承認があれば、当該建物の集会における建替え決議により、団地内の特定の建物を建替えできるようになりました。

団地内建物の一括建替え決議

団地管理組合の集会において、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成で団地内の建物全てを一括で建替えることができるようになりました。

ただし、その集会において団地内建物ごとに、区分所有者および議決権の各3分の2がその一括建替え決に賛成している必要があります。

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