区分所有法 第十七条(共用部分の変更)の解説

条文

共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

解説

形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更区分所有者及び議決権の各4分の3以上(特別決議、区分所有者の定数は規約で過半数にすることができる)の賛成による決議が必要です。

民法では共有物の変更は共有者の全員同意が必要となります。しかし、区分所有建物では共有物の変更(共用部分の変更)を全員同意で行うことは現実的ではありません。そこで、区分所有法では共用部分の変更を集会(通常、管理規約では総会)における多数決で決議をすることとしています。

共用部分の変更の議決要件は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上が必要となっており、これを特別決議といいます。ただし、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」とありますので、形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更が特別決議を要することになります。逆に、形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更は普通決議で可能です。

この要件について、平成14年の区分所有法改正前は、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く」という表現になっていました。この場合、何をもって多額の費用とするのか基準が明確でありませんし、大規模修繕工事を実施する際も特別決議が必要となり、建物を維持管理する上で必要とされる工事も円滑に行うことができない場合がありました。

改正によって、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」となったおかげで、通常の外壁補修工事や防水工事であれば、多額の費用がかかっても普通決議で行うことができるようになりました。(マンション標準管理規約(単棟型)第47条(総会の会議及び議事)関係のコメント参照)

なお、この共用部分の変更に関する特別決議に限っては、管理規約によって区分所有者の定数を過半数まで減らすことができます。ちなみに、マンション標準管理規約ではこの緩和要件を採用していません。

第二項では、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響をおよぼす場合は、その専有部分の所有者の承諾を得る必要があることが定められています。多数決ではありますが、特定の人が不利益を被らないような仕組みが用意されています。

関連法規等

マンション標準管理規約(単棟型) 第47条(総会の会議及び議事)

総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。

3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。

一 規約の制定、変更又は廃止

二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)

三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起

四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧

五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項

4 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。

マンション標準管理規約(単棟型) 第47条関係コメント

1 第2項は、議長を含む出席組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった議事は否決とすることを意味するものである。

2 特に慎重を期すべき事項を特別の決議によるものとした。あとの事項は、会議運営の一般原則である多数決によるものとした。

3 区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更につ いては区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている(なお、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、区分所 有法第17条第2項(第18条第3項において準用する場合を含む。)の規定に留意が必要である。(第8項参照))。

建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべ きであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定 を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第47条第3項第二号である。

なお、建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条の規定により、要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修については、区分所有法の特例として、敷地及び共用部分等の形状又は効用の著しい変更に該当する場合であっても、過半数の決議(普通決議)で実施可能となっている。

4 第1項に基づき議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、第2項に基づき出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)される事項は、総組合員の議決権総数の4分の1超の賛成により決議されることに鑑み、例えば、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、組合員総数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨規約に定めることもできる。

5 このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。

ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。

イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて 補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。

ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場 合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に 変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブ ルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、 外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。

オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、 給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベータ ー設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。

カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関 扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

6 建替え決議及びマンション敷地売却決議の賛否は、売渡し請求の相手方 になるかならないかに関係することから、賛成者、反対者が明確にわかるよう決議することが必要である。なお、第4項及び第5項の決議要件につ いては、法定の要件を確認的に規定したものである。

民法 第二百五十一条(共有物の変更)

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました